アイ、アム、アイ

他でもない自分について

水は滴り落ちていく

 

 

高校時代に水の話を習った。

確か国語の授業だったな、とても面白い話だった。

詳しくは覚えてないけど。

日本人は、水が流れる様を愛しているらしい。

日本に噴水が少ないのは、それが理由だって。

加工して、華やかで下から噴き上げる水よりも、

上からただ流れる鹿威しの方が好まれるって。

 

私は昔からプールによく通っていた。

泳ぐというより、潜るのが好きだった。

休日の市民プール、喧騒としているのに、

一度水に潜ると、音が消える。

嘘みたいに、そこは私だけになる。

その感覚が好きで、何度も潜った。

 

赤子は、羊水という空間から出ていくのが嫌で、

大泣きするとも言われている。

それを聞いて、私が何度も水に沈むのは、

再び胎内に帰ろうとしているのかなと思った。

生きていくのが嫌で、誰とも関わりたくなくて、

それでもへその緒で繋がれてる安心感が欲しくて、

私は胎内に戻ろうとしている。

 

望んで生まれてきたわけじゃないけど、

自分の人生と引き換えに育ててくれた親のためなら、

頑張って生きていこうと思う。

どうせ生きていくなら、他人に優しくしたい。

きっと誰もが最初はそう思っているはず。

私は性善説を信じている。

いつから道が違うんだろう。

自分が、自分が、自分が。

自分さえよければ、他はなんでもいい。

申し訳ない気持ちはあっても、

やっぱり可愛いのは自分。

小さい頃はあんなに重みのあった

「ごめんね」が

今では挨拶のように言えてしまう。

大人になるってこういうことなのかな。

汚くなっちゃったことに理由をつけるために、

これが大人になった証拠だよ、なんて言うんじゃないの。

 

俺だって、みんなに優しくしたいよ。

誰をも愛して、苦手なところを見つけても包み込んで、

愛し愛され生きていきたいよ。

みんなが思う優しさを、俺だって備えていたかった。

伝わらない優しさなんて、

誰の役にも立たない信念なんて、

端から持ってない方が良かったよ。

 

私には、生まれつきの優しさも、

思考をがなぐり捨ててまで信用できる素直さも、

兼ね備えてないから。

だからせめて勉強して、学んで、努力して、

誰かの手助けをしたいと思ってる。

まあ、上手いことまとめたけど、

私は人生において後悔してることなんてひとつもないし、

ずっと考え続けて、出し続けてるこの信念に、

少しの間違いだってないと思う。

だけど、

これは間違ってるね、って

笑える相手がいたら違ったのかもしれない。

一緒に間違えちゃおうよ、って

手を引いてくれる人がいたら、

今の私じゃなかったのかもしれない。

そんなの巡り合わせだから、

もしそういう人生が送りたいなら、来世に期待しとこうね。

現世は、いつだって正しいことを考えて、

自分の信念や思考をブラッシュアップして、

誰がいなくなろうと、自分が正しいと思う生き方で生きよう。

世界がひっくり返っても、私だけは変わらないでいよう。

きっと人は、変わらないものに安心するから。

私のように、変化が怖くて泣いてしまう人がいないように、

私だけは変わらないでいよう。

私のために。誰かのために。このままでいる。

 

目に見える優しさだけが、本当の愛だと思う?

誰にも見えない気持ちは、あるだけ無駄?

そうじゃないでしょ。そうじゃないと思いたいよ。

自分が強く、誇り高く、ただそこにいるだけで、

安心感を与えられるような存在でありたいと願うよ。

 

私のバイブル、とある少女漫画のセリフ。

「人は何度でも選ばなかった選択肢を考える」

この言葉のおかげで、後悔をしなくなった。

どうせ別の選択肢を考えてしまうのなら、

どっちを選んだって同じ。

直感でいいし、運でいいと思った。

起こったことは変わらないし、

なってしまったことはしょうがない。

そんなことより、したいことは山ほどあるから。

 

これで誰かのアンサーになったかな。

悲しいことがあっても、傷つくことがあっても、

私は変わらないよ。

嘘なんてたやすくつけるけど、つかない。

好きだよ、大好きだよ、なんて、

本当に思ってるからこそ、言わないもんだと思う。

言葉が欲しいなら、Siriにでも話しかけていてくれ。

そのかわり私は変わらないことで、

何度でも思考して、その思考を示してみせることで、

誰かのそばにいるつもり。

 

運が良ければ、いつかどこかで。

私が変わってもいいやと思えるようなものに会えますように。

この思考を止めてまで、

間違いを楽しめるようになりますように。

 

それまでは考え続けるよ。

たとえ、世界にひとりになろうとも。

水が流れゆくあいだは。